ワクチンセンターの現状
ドイツでは2020年12月末時点で約400カ所の新型コロナ対策用ワクチンセンターが開設・施工中だ。計画中のセンターも含めるとその数は442カ所となる。(主な内訳としてはバイエルン州93拠点、ラインァンドファルツ州31拠点、ニーダーザクセン州50拠点、バーデンヴュルテンベルグ州59拠点、など)
ワクチンセンターとして利用されるのは主に体育館、展示会場、コミュニティホール、テニスコート、サッカー場、ホームセンター、ホテル、コンサート会場、などである。
ワクチン接種の予約は州ごとにオンライン特設ページで行うかコールセンターへ電話で行う。センターに必要以上の人が押し寄せないよう予約システムで人数をコントロールし、予約人数の倍の数のワクチンが計画通りセンターに届けられなければならないため、予約システムの管理は非常に重要なファクターとなる。
バイエルン州では1日3万人までのワクチン接種を計画、ヘッセン州では1日3万人、ベルリンは1日2万人までの接種計画だ。
ヘッセン州では10万回分のワクチンが確保され、開始から5日間で2万1400人が接種をした。第一グループに振り分けられたのは高齢者(80歳以上)、介護施設利用者、医療従事者など56万7千人である。
ワクチン接種の優先順位は以下のカテゴリでグループ分けされている。
グループ1:
・80歳以上の方
・介護施設の利用者および同施設のスタッフ
・外来看護職員
・集中治療室、救急室、救急隊員、ワクチンセンターの従業員
・ハイリスク者の治療・介護・看護を行う医療施設の職員
グループ2:
・70歳以上の方
・臓器移植後に感染の危険性が高い方+その同居者
・認知症を有する者
・妊婦の同居者
・精神障害者の治療、介護、看護を行う者、
・感染リスクが高い医療施設で働く人、採血・輸血を行う人
・勤務中に感染の危険性が高い警察や法執行機関の職員
・保健所関係者及び病院インフラ関係者
グループ3:
・60代以上の方
・慢性腎臓病、慢性肝疾患、免疫不全、糖尿病、心臓病、脳卒中、がん、喘息、免疫疾患、リウマチなどの持病持ち
・感染リスクの低い医療施設の職員
・政府、行政、憲法機関、軍隊、警察、消防、災害対策、司法の関係者
・重要インフラ企業、薬局・製薬業界、食品業界の関係者
・教育者
センターで働くスタッフの確保は大きな課題である。ドイツでは既に数万人の医師・医療従事者、スタッフがワクチンセンターでの労働に登録している。
僅か1~2か月の間にこの人数のスタッフを募集・登録したというのは驚きだが、報酬の高さがこの仕事を魅力的にしている。 センターの医師の時給は130~140ユーロ(約1万6~7千円)と言われている。医師は診察室で持病やその日の体調などを聞き取りし、コロナワクチン接種の意味、副作用やアレルギー反応、その際の対処方法などについて説明するのが主な役割となり、注射器を使ってのワクチン接種は看護師が行う。(*医師が接種を行うケースもある)
バーデンヴュルテンベルク州では9カ所の大規模ワクチンセンターと50カ所の小中規模センターを準備し、合計4700名の労働スタッフを募集した。3000名の医師と1500名の希望者が既に登録している。定年退職した医師などから積極的に応募があり、1日8時間で1,040ユーロ(約13万円)が医師の報酬となる。医師免許を持たず、接種自体を行わない労働スタッフには1日220ユーロ(時給約3500円)が支払われる。
センターでの仕事はワクチン接種自体以外にも、受付、誘導員、清掃員、事務処理係、警備員、通訳など様々だ。
ノルトライン・ヴェストファーレン州では1月15日までに53カ所のワクチンセンター施設が整い、スタッフは既に1万5千人が登録している。
NRW州では12月27日からワクチン接種が開始されており、1週間で3万8千人が接種した。ノルトライン・ヴェストファーレン州には3000の介護施設に約20万人の利用者がおり、各施設にはワクチン接種の説明・報告書が届けられている。
この州は1月から毎週14万1千のワクチン入手を契約済みで、1回目の接種から3週間後に2回目を打つ必要があるため、接種人数の倍のワクチンを確保しておかなければならない。逆に言えば、ワクチン確保数の半数に人数しか接種は出来ない。
日本の菅首相は1月初旬「2021年2月下旬からワクチン接種が可能になるよう政府一体となって準備を進める」という発言をした。しかしワクチンセンターの開設には会場の確保、レイアウトの計画、施工、電源やLAN回線の整備、家具・備品の手配、医師・スタッフの確保・トレーニング、清掃品、警備員の手配、警察・消防との連携など、膨大な準備が必要だ。
それでは実際いつ頃我々はワクチン接種が可能になるのだろうか。例えば横浜市に1000人規模のワクチンセンターを10カ所作った場合、10カ所合計で1日1万人(回)のワクチン接種が可能となる。1日12時間の運営で、週7日休みなくセンターを開けたとして、1カ月で30万回の接種が可能。ワクチンは一人二回打つ必要があるため、人数としてはその半数の15万人が1カ月で接種可能となる。その体制を維持した場合、12カ月で180万人となり、1年かけても市民の半数(横浜市の人口は372万人)にも行きわたらない計算となる。
それではこの業務を病院に託すことが出来るだろうか?ワクチンの冷凍保存も問題だが、病院は現在コロナ対応だけでも大変な状態である。通常の業務に加え、毎日何百何千のワクチン接種希望者を受け入れることは出来ないだろう。
であれば政府や地方自治体は勇気をもって、ワクチンセンターの規模と数を増やすことを目標に準備態勢を整えるべきだろう。
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